1)現在の投資法の問題点
投資経験が3年以上でトータル成績がマイナスであった場合、その投資手法は間違っていると言えます。今後その投資手法で収益をあげていくことは困難であると考えます。
我々が生活している社会で、物事の現象はすべて原因結果の法則で成り立っています。
原因なくして結果なしということです。
これらの法則を株式投資に当てはめてみますと、「儲かった」「損した」ということは結果であり、それにはそれなりの原因があるはずです。業績が良い銘柄を安値で仕掛けたので儲かった。
値上がりするという情報が入ったので、買い付けしたが結果的に高値掴みとなり損をした。
株式投資の結果である収益を上げるためには、原因となる正しい分析、正しい判断が不可欠となってきます。
しかし、どれが正しい分析や正しい判断であるかは非常に難しく、これらは投資家にとって永遠のテーマでもあります。
現実的にこれらの判断は困難ではありますが、逆に明らかに間違った考え方やその判断を消去法的に少なくしていけば収益の上がる方向へ少しでも近づくのではないかと考えます。
儲かる投資法を見つけ出すことは難しいのですが、しかし間違った投資法では何年株式投資に励んでも結果は押して知るべしです。
2)間違った常識
我々を取り巻く株式投資の世界では「間違った常識」が、まかり通っています。株式投資は情報の先取りであるとか。
過去の経験則によるとなどと言った一見当たり前の常識と思われることが専門家の間でも違和感なく使われています。
確かに情報の先取りができれば良いのですが、それらの情報が我々に入ってくるのは最終段階の情報であり、買い付けしようとしてもすでに株価は上昇していることが一般的です。
インターネットの発達により情報の伝達は瞬時であり地域格差もなくなりました。
株式投資に関する情報も洪水のようにあふれています。これらの中から有効な正しい情報する探し出すことはなかなか難しいと思います。
あまり情報が多いと迷いが生じるものです。情報は噂や怪しげな情報もありこれらを判断するにはインサイダーがらみでもなければ無理なことです。
過去の経験則ということは、どのあたりの過去を言うのでしょうか。
バブル期の上昇の経験則は現在の相場には当てはまりません。非常にあいまいで抽象的です。
また下げ幅に対する戻しは、半値戻しとか3分の1戻しとか言われますが、これは心理的な節目をいうのでしょうか。
経験則の根拠を明らかにしていただきたいものです。
これらの問題も正しい知識と客観的な立場で冷静に考えれば避けられるものと思います。これらの間違った考えやその手法を取り除くことによって、初めて株式投資のスタートラインに付くことができます。
3)分析指標の問題点
株式分析指標は数多くあり、どの指標がよく当てはまるか判断は難しいところがあります。
たとえば一株純資産(PBR)は大底での買い付けには非常に効果的な指標です。一般的に一倍を割ったら買いと言われています。
バブル上昇期には一倍割れの銘柄は皆無に近い状態であり、現在のような低迷期には多くの銘柄が一倍割れの状態です。しかし一倍割れの多くの銘柄は業績が低下の一途をたどっているのも事実です。
テクニカル分析指標にカイリ率があります。一般的に移動平均に対してどれだけカイリしているかといった使われ方をしていますが、通常の相場であれば利用可能とは思いますが、もし暴落などがあった場合すべての銘柄が通常の基準値から大きくカイリしてしまい、これらのカイリ率は使い物にならなくなってしまいます。
当研究所では、一般に出回っているテクニカル分析指標、「移動平均」から「かぎ足」をはじめ「RSI」「RCI」やオシレター系、モメンタム系などあらゆる指標で長期間の売買シミュレーションを行いました。
その結果は短期間で大幅に利益の上がる指標もありましたが長期間運用するとすべてマイナスという結果となりました。
これらは単独の指標による実験でしたが、これらの指標を否定するものではなく、いくつかの指標の組み合わせで行えば良い結果が出るかもしれません。
4)コンピュータ分析ソフトの問題点
最近のコンピュタは非常に低価格であり、またその処理能力も従来に比べると数段の能力の差があります。株式分析には最適なツールとなっています。最近の株式分析ソフトも分析指標が数多く搭載され瞬時に分析処理ができます。
しかし、これらの指標も一般に出回っている従来の指標を取り揃えたものが多くあまり斬新さを感じません。
またこれらの指標の検証をふまえた確率的なデータの開示は一切ありません。
「分析指標はたくさんありますので、これらを自由に組合せて自分で勝手に判断してください」といった内容で、これらを利用する投資家にとっては迷うばかりです。
自分なりにあれこれ指標を組合せて売買したもののうまくいかず、今は持ち株のチャートを眺めているだけになってはいないでしょうか。
特に売買シグナルの表示されるシステムでは注意しなければならない点があります。これらのシステムの過去のデータで下降期の買いシグナルの数と、上昇期の買いシグナルの数を比較してください。
下降期の買いシグナルの数の方が上昇期より多くなっているシステムを見かけます。下降期にナンピンしながら買い下がるようですが、これでは何回買い下がるのか不透明で資金配分もできません。
当然ながら利益も上がらないはずです。これらはできるだけ安い位置で仕掛けようとする逆張りシステムに多く見られます。
これらのシステムは検証に基づいた、正しい利用方法の解説をしていただきたいものです。
5)確率の問題点
巷には多くの投資手法があります。
米相場の「酒田五法」や「カギ足」などから最近の「ボリンジャーバンド」「ストキャスティング」など多くの手法があります。
これらの指標を利用したシステムで「勝率8割」などと確率の高さをうたっているシステムは問題ありと考えて良いと思います。
確かに短期間では高い確率のシステムもあると思いますが、これらの指標も長期間運用すると限りなく確率50パーセントに近づいて行きます。「一時は成績も良かったが現在は負けつづけている」といった現象になります。
バブル期の頂点を前後して株価の推移を見ると、上昇トレンドに乗れば利益を上げることができますが、一旦下降トレンドに入ると今までの利益を吐き出してしまいます。
相場は長期的には上げ下げの確率は限りなく50パーセントに近づくことになります。相場は「ゼロサムゲーム」といわれる所以です。「確率50パーセント」の世界で利益を上げることは不可能ではないかという疑問が出てきます。
しかしこの確率のなかで利益を上げる方法はただひとつだけあります。「損少利大」、つまり損は小さく利益は大きくということになります。
当たり前のことですが、しかし実際売買に入ると不思議に投資家のほとんどがこの反対の行動を取ります。
利益は早めに確保し、損は戻りを待って処分しようといつまでも持続して結果的に塩漬けなってしまいます。
「儲けたい、損したくない」という気持ちが強く誰がやっても同じ行動パターンになります。
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