2021/08/20 のコメントです。
テクニカル分析指標は数多くあります。その中でも一番ポピュラーなのは、やはり移動平均線でしょう。移動平均線はどのようなチャートにも付いています。移動平均線の付いていないチャートを探すのは難しいほどです。
これだけ認知された指標でありながら、その利用の方法を詳しく説明した解説書はありません。あったとしてもゴールデンクロスやデッドクロスなどの意味についての説明程度です。もう少しレベルの高い解説書はないのでしょうか。
では、ここで移動平均線について考えてみましょう。平均と言うわけですから、ある程度まとまったデータを平均した数値と言うことになります。平均値とは、いくつかの数値の総和をそれらの数値の個数で割って得られる値です。
ここで言う「いくつかの」とは、株価チャートの場合では、さかのぼる日数に当ります。また、数値とは株価を指します。つまり、その要素(平均値)は日数と株価により算出されます。株価については実際の株価ですのでそのまま利用します。問題は日数です。
さかのぼる日数を何日に設定するかです。これによって算出される指数も大きく変わってきます。一般的に移動平均線の日数は、25日、75日、あるいは長期的に200日などで計算されるようです。しかし、それらの日数の根拠はどこにあるのでしょうか。
25日ではなく26日ではいけないのでしょうか。75日ではなく80日ではいけないのでしょうか。物事はすべて原因、結果の法則が働きますので、これらの根拠(原因)が明確でなければいけません。
私が考えるに、25日ついては以前、土曜後も半日立会いがありましたので、一週間で立会いが5日あり、これを1ヶ月(5週間)とすれば25日となります。つまり、25日は1ヶ月平均の移動平均線ということになります。しかし、現在は土曜日はお休みとなっているため、1ヶ月は20日となるのではないでしょうか。
これらから考えれば、現在は20日の移動平均線を利用すべきではないでしょうか。それはそれとして、25日や75日の移動平均の日数の根拠はどこにあるのでしょうか。ある人が言いました。「みんながそれを信じて利用すれば機能するのではないか」と。私は常々申し上げています。「みんなと一緒では儲からない」「何事も根拠が明確でなければ、結果はさらに曖昧になる」と・・・。
ある株価がほぼ右肩上がりで推移したとします。これらを移動平均線で計算しますと、平均値はおおむね株価推移のの中央付近になると思います。すると、平均値は過去の数値ということになります。一般的に、移動平均の見方は、現在の株価と現在の移動平均と比較して、乖離幅などを見て高いとか安いなどと判定します。
しかし、現在の移動平均値は上記の説明のように、実際には過去の数値なのです。株価の高い安いは過去との比較であるため、過去の平均値による比較でも良いわけですが、移動平均線を利用される場合は、これらの点も十分理解した上で利用するべきです。
また、株価の変動は一定ではありません。大きく変動することや長期間わずかな変動しかない時もあります。ここで問題となるのは、ランダムな株価の変動に対して常に一定の移動平均日数で対処しているということです。これでは、過去において最適化して一番良いとされる移動平均日数でも上手く行きません。
皆さんも経験があると思いますが、パソコンでテクニカル指標をいくつか組み合わせ最適化し、これならいけると挑んだものの結果は希望通りにならなかったなど。当然です。変幻自在な株価に対して型にはまった分析指標で捉えようとしても、一時的に上手く行ったとしても、最終的には損となってしまいます。
もし、一般的な分析指標で株価を捉えようとするなら、指標を日々最適化して株価の変化についていく必要があります。これらの手法は指標の固定化よりは良いと思いますが、それでも株価の変動はなかなか掴みきれないものです。
では、移動平均線の確たる利用法がないにも拘らず、なぜ、株価チャートの表示には移動平均線が付帯しているのでしょうか。ローソク足だけでは株価チャートが寂しいからでしょうか。
移動平均線は、その分析日数の根拠が明らかでない、移動平均値は過去の数値であるなど、移動平均線を利用するに当っては問題も多いのですが、株価チャートを瞬間的に見た場合、株価と移動平均との乖離により、現在の株価が高いか安いかの判断がつきやすくなります。しかし、この瞬間的に見た感じで売買されるのは、いささか早計ではあると思いますが・・・。
移動平均線は株価の傾向を見るのには役に立つでしょうが、実際の売買に利用する場合は他の指標などと組み合わせて利用するべきでしょう。もし、単独で利用するのであれば、移動平均線が上昇傾向時に、株価が下からその移動平均線を上抜けした場合に買い付ける。また、移動平均線が下昇傾向時に、株価が上からその移動平均線を下抜けした場合に空売りするなどでしょう。
テクニカル分析指標に明確な根拠を求めるのは多少無理があるものの、テクニカル分析指標を利用される場合は、できるだけ長期間の模擬売買をされ納得してから採用すべきであると考えます。 |