2019/01/20 のコメントです。
今回は「投資哲学(その5)」として「売買のシステム化」について解説いたします。
◆売買のシステム化
仕事や投資において、その収益を上げるためには日々努力し、継続的に運営を行わなければなりません。当然ながらその過程において紆余曲折もあるでしょう。企業であれば、特に景気低迷期においては苦難と試練の時期となることもあります。
何事も一朝一夕では成就しないものです。当然ながら投資の世界でも同様です。投資でも収益を上げ続けるには「長期間にわたる継続的な運用」となります。そして「長期間」の間には、歓喜する時も恐怖におののく時もあるはずです。投資では、それらを乗り越え長期間継続して売買を繰り返さなければなりません。
新規参入した投資家の寿命は4、5年と言われています。これでは投資の目的である収益を上げることも叶わない。そのような結果になってしまう原因は何だろうか。
それは、当然ながら矢折れ刀尽きるまで戦い、努力もむなしく壮絶な立ち往生を遂げた結果ではないだろうか。投資家が退場する第一の要因は、やはり「負けてしまった」に尽きるのではないでしょうか。退場する直前まで投資家は、苦悩し続けていたに違いない。しかし、相場の世界とはそのような世界でもあるのです。
退場する理由としては、その売買技術が劣っていたということもひとつの要因かもしれませんが、一般的には、売買技術は経験に比例して上達してゆくものです。しかし、そのほかにも要因はあると思います。たとえば、損切りルールなどを決めておいても、暴落時などでは、それがことごとく実行できなかったなど・・・。
ルールを決めても、それが実行できないということは、投資家自身の問題であり、これだけは誰も助けてはくれません。私も以前に裁量的な売買をしていた時期には、これらの問題で大いに悩んだ経験があります。
投資の世界には、超えられない大きな壁があります。それは売買における「感情のコントロール」です。株式投資は欲を持って参入するものの、欲を出しすぎると負けることになります。まったく相反し矛盾するものです。これらの矛盾は、株式投資を続けていく限り必ず影のように付きまといます。
それが投資家の判断を狂わすのです。このように、相場の世界では、この「投資家の感情のコントロール」が魔物のように付きまとい、投資家に襲いかかるのです。 投資家であれば誰でも体験することであり、投資家は、今でもその魔物に取り付かれ苦悩し続けているのではないでしょうか。そして今後も・・・。
私自身も今、株価チャートを見ながら裁量的な売買をすると感情(欲と恐怖)が邪魔をして負けてしまうと思います。主観や感覚、感情は、人間の本質にかかわる問題 でもあり、努力すれば誰でも克服できるというものではない気もします。その点、昔の相場師は偉かった。これらの問題を血のにじむような努力と鍛錬を重ね、強い 精神力でこれらを乗り越えてきたのではないかと想像します。しかし、私にはそのような真似はできません。無理です。
私自身も過去において、このような状況に長い期間悩み続けてまいりました。なぜこのような苦しみが続くんだろう、何とかこのような苦しみから解放されたい。そ の原因は何だろうと長い間、自問自答する日々を送っていました。これらが「投資家の感情のコントロール」にあることを理解したのは、だいぶ後になってからのこ とでした。そこで私は、唯一解決できなかった問題である「投資家の感情のコントロール」を必要としない株式投資法を考えたのです。
誰でも一度は「つもり売買」をしたことがあると思います。つまり、実際に売買しないで、買ったつもり、売ったつもりの売買のことです。「つもり売買」は非常に うまくいくものです。しかし、実際に売買するとうまくいきません。机上の空論と化してしまいます。どうしてでしょう。
このギャップは「投資家の感情」によって説明できると思います。仕掛け銘柄に利が乗ってきたものの高値恐怖症になり早めに利食いしてしまった。暴落時に、ここ は底値だと考えるものの仕掛けを躊躇してしまったなど。「つもり売買」では、これらを一切無視して淡々と売買することができます。「つもり売買」では、感情移 入がありませんから・・・。
これらから、投資の収益を妨げるのは投資家の感情が多くの部分を占めるということが言えると思います。翻って言えば、投資家の感情を排除すれば「つもり売買」 のように、収益を上げることができるのではないでしょうか。
そこで、私は「投資家の感情のコントロール」を排除した株式投資法を考えたのです。それは「売買のシステム化」でした。銘柄選択から仕掛け、決済ポジションま ですべてルール化して売買するものでした。しっかりとバックテストも行いました。
しかし、しかし、「売買のシステム化」による売買においても、システムが指示した売り、買いが、ことごとく私の考えと反対の指示をしてくるので、これらの指示 に従うことが困難となってしまったのです。自分が散々苦労して作ったシステムでさえも・・・。結局、元の木阿弥です。
「売買のシステム化」以外に、投資で収益を上げる方法はないと信じるも実践ではやはりうまく対応できなかった。私は、ここで大いに悩んだ。これから行く道が閉 ざされたかのようだった。
そこで私は一考し、今まではシステムが指示した売り、買いサインを株価チャートを見て確認していました。株価チャートを見るからあれこれ考えてしまうので、こ れをやめてみようかと・・・。システムが指示しているのに、改めて株価チャートなど見て確認する必要などないのではと。そのための膨大なバックテストではなか ったのかと。
そこで、不安はあるものの株価チャートを一切見ずに売買を始めました。すると不思議にシステムの指示通りの売買がスムーズにできるようになったのです。損益は 分かるものの、個別の銘柄の株価水準や売買ポジションは視覚的に分からないためなのか、あれこれ悩むこともなく売買が進みました。
現在は、多くの銘柄に分散投資をしていますので、なおさら個別銘柄を云々するようなことはありません。どのような銘柄を持っているかさえもリストを見なければ 分からないくらいです。このようにして、投資家が一番難しいとされる「投資家の感情のコントロール」から開放されることになったのです。
このような経過を経て「売買のシステム化」に、ついにたどり着いたのです。しかし、誰でもシステム売買になじむとは思いませんが、投資とは「長期間にわたる継 続的な運用」であり、これらに沿った運用では「売買のシステム化」による運用がベストではないかと私は考えます。
システム売買のメリットは、その売買の一貫性を保証し、一定の条件によって指示されるシグナルに従う。このことは重要なことであり、どのようなシステムであっ ても、その売買に一貫性がなければ、いずれ大きな損失を被ることになります。
システム売買のデメリットもないわけではありません。投資家自身が構築したシステムならいざ知らず、他人の作ったシステムをどこまで信用していいものなのかな ど・・・。また、システム売買は事務的な処理となるため、その売買は、ひとつも面白くありません。このように、何事にもメリットだけということはないわけです。
また、これらのシステムの指示に従うことにより、投資家はリスク管理の手段を持つことになります。売買にはリスク管理は絶対必要で不可欠のものです。リスク管 理を持たないシステムでは、一度の失敗(大きな)で悲惨な結果をもたらすことも少なくありません。適切に設計されたシステム売買には「損切りルール」が付帯し、 大きなトレンドが発生した場合には、それらに追従し、適正なポジションでそれらを反転させる機能を有しています。
適切に機能するシステム売買では、まずい売買が積み重なって損失を出すことがあっても、一回か二回の売買によって投資金のすべてが吹き飛んでしまうということ は避けられます。
システム売買がすべてに優るとは申しませんが、投資では、その売買に一貫性がなければいけません。多くの投資家は、この点で悩み続けます。いつも述べています ように、あるシステムで何回か売買して、うまく行かないとすぐやめてしまう。これらは、投資家が確固たる投資理論や売買手法を持ち合わせていないということに も起因しています。売買システムを確立できず、あれこれ悩んで売買しているうちに、投資金はどんどん目減りしていきます。
システム売買で運用することは、その売買自体は簡単なことなのですが、実際の運用では感情が邪魔をして継続できないこともあるでしょう。しかし、システム売買 には、投資の基本である「長期間にわたる継続運用」を行うための「売買の一貫性」があり、また、投資家の大敵である「ストレス」から開放されるという利点もあり ます。投資に必要不可欠な「リスク管理」も可能であるため、非常にメリットが多い投資手法と考えます。
私は、投資手法の究極の到達点は「システム売買」に行き着くと考えています。 |