2020/05/16 のコメントです。
コロナショックにより、日本はもとより世界の経済が低迷している。投資家として著名なウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、保有する上場株(総額1807億ドル)の評価損が膨らみ、最終損益は497億ドル(約5兆円)の赤字と、過去最大の損失となった。同様にジム・ロジャースも大きな評価損に見舞われた。
著名な投資家でも今回のコロナショックは予想できなかったと言うことだ。私が常々申し上げている「相場の予想はできない」と言うことです。「明日のことは分からない」、これが相場に対して私は長い投資キャリアの中で出した結論です。
このように明るい話題のない中、我々投資家はどのようなスタンスで活動していけばよいのでしょうか。
ここでひとつの考え方を述べてみたい。これらについては賛否両論あると思いますが、絶対のない相場の世界ですので「そのような考え方もあるんだなあ」程度に捉えていただければよろしいと思います。
まず、投資とは将来的に収益を得ようとする活動です。そのためには、今後の景気動向を的確に判断して投資を行うことです。しかし、将来を予測することはできても、これらを投資の収益に結び付けていくことは現実的には難しいものがあります。好業績予想銘柄に投資すれば誰でも儲かるはずですが、実際にはそのようになっていない現実は多くの投資家が知るところです。
個別銘柄について考えて見ましょう。実際に投資をするには個別銘柄のファンダメンタルズなどを検証し仕掛けに入るわけですが、実際に仕掛けに入ったとしても、その後の上げ下げは50%程度です。たとえ、好業績銘柄に投資しても全体の相場変動に大きく振り回されることになります。
相場の予測をするのは無理である。個別銘柄を検証して仕掛けてもすべて上手く行くとは限らない。このようなことから、株式投資で実際に儲けている投資家が3%程度しか存在しないという結果になるのでしょう。
多くの個人投資家は、買いオンリーであり「株は買うものである」という固定観念を持っています。そのような考えは間違いではないのですが、現実的に株式市場は20年以上もの下降トレンドを形成しています。そのような環境の中で、買いのみでは、その収益にも限界があります。
20年以上もの下降トレンドも結果論でしかないのです。後講釈は評論家に任せておけばよいのです。明日のことは、株式市場においても個別銘柄においても分からないことです。これらは投資家の永遠のテーマであり、今後も解決できない問題でしょう。
投資市場の変動要因には、ファンダメンタルズから需給関係、投資家心理などあらゆる要因が絡み合って変動しています。個人投資家が、これらの要因をひとつひとつ解析し検証することは無理というものです。これらは機関投資家であっても著名な投資家であっても無理なことでしょう。
であるならば、分からないこと、解決できないことは初めから捨ててしまってはいかがでしょう。所詮、無理なことをしようとするから悩んだり苦労したりするのではないかと思うのですが・・・。
では、一般的に重要とされる、投資の常識とされる相場の見通しや個別銘柄のファンダメンタルズなどを検証せず投資活動を続けていくには一体どのような方法があるのでしょうか。
相場においても個別銘柄においても予想は無理としても現在の状況は分かるはずです。たとえは、株価が過去一年間の高値近辺にあれば、今後の展開は分からずも、ある程度高値水準にあると判定できるはずです。反対に、株価が過去一年間の安値近辺にあれば安値水準にあると判定できるはずです。
このような判定を全銘柄で行い集計すれば、現在の相場全体の水準が分かるはずです。このように集計された相場全体の指数は、紛れもなく現在の指標となります。そこに予想や主観は一切入っていません。
集計された相場全体の指数をもとに、現在の相場水準を判定し、それらに沿った運用を行えばよいのではないでしょうか。ただ、これらの指標の利用の方法を間違っては元も子もありません。
たとえば、相場水準を判定後に相場全体が、平均水準より高い位置にあった場合、一般的には高い位置にあるので、買いは控えて空売りでもしようかと考えがちですが、このような考えは間違いで、逆に買いを増やすべきです。なぜなら、平均水準より高い位置にあった場合には、その推移も判定しなければなりませんが、往々にして相場は上昇トレンドを示していることになるからです。
上昇トレンドであれば買いとなるのは当然でしょう。相場全体の指標がピークを打って下り坂を示してからでも空売りは遅くないでしょう。
もし、相場水準が中立で推移した場合には儲けが出ないように考えられます。たとえば、現在の数値で割安とされる複数銘柄(テクニカル的に)を買いに回し、現在、割高とされる複数銘柄を空売りしたとしますと、相場水準が中立で推移しても割高、割安銘柄は時間経過とともにおおむね収斂されてきますので、大きな収益は期待できないものの、それなりの収益が得られることになります。
このようにして、個別銘柄の売りと買いの資金量を現在の相場水準に合わせながら運用することで破綻することなく継続的な運用が可能となるのではないでしょうか。
現在の相場水準は、当研究所の「相場観測指数」であり、「ヘッジ比率」なのです。また、割高、割安銘柄は、個々の売り銘柄であり、買い銘柄なのです。さらには、個別銘柄をランキングして、銘柄選択が容易にできるような分析システムとなっています。
相場の見通しや個別銘柄の今後の展開を予測することは大いに結構なことですが、これらは統計的に見ても、その確率は50%程度に収斂することになります。であるならば、株式投資を別の角度、別の視点から捉えることも必要となってくるのではないでしょうか。
『世の中はいつも間違っている。世の中は、本来あるべき正しい姿から常に乖離しながら変化している。よって、現在の常識はいずれ非常識となる。常識は先入観』 |